昨年、泉大津市市長から医師の視点から意見が欲しいと「足ゆびプロジェクト」への参加を呼びかけられました。
このプロジェクトの目的の一つは、
大脳の姿勢中枢に独自の姿勢がインプットされる前の幼児に足ゆび荷重を習慣化させ、運動能力、知的能力の向上をはかり科学的なエビデンスを実証することです。
泉大津市が1500万円以上の予算をかけて行う、前代未聞の大規模かつ長期的な調査です。
私を含めたドクターと、運動生理学の専門家として九州共立大学准教授の森部昌広先生、Jリーガー長友選手の専属トレーナー木場克己さん、科学研究所の「理研」など各方面のプロが集まって構成されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/森部昌広
日本のこどもの足ゆびの機能が低下した要因には
幼児期に
① 靴や靴下を履く習慣の定着、
② 外で遊ぶ時間の減少、
③ 洋式トイレが普及ししゃがみ姿勢の消失
などが挙げられます。
私は小学校の学校医として年に1回、1年生から6年生の健康診断を行っています。
そこで毎年驚愕するようなこどもたちの異常姿勢を 目の当たりにしています。
その中でも危機感を覚えるのは、小学生の外反母趾が急増していることです。
小学校1年生で既に外反母趾の変形を生じている子が目立ってきました。
これはH25年日本学校体育連合会が足育指導資料として統計をとった結果です。
15度以上足の親ゆびが曲がる変形を医学的に外反母趾と言います。なんと女子では小学6年生で4人に1人が外反母趾になっているのです。
外反母趾はハイヒールを履いて生じるものではなく、体幹の筋力が弱化し、それでも立位の姿勢を安定させようとして生じる足ゆびの代償動作です。
また、現代のこどもたちの多くが足ゆびに体重がのらずかかと荷重になっており、これを「浮きゆび」と呼んでいます。
論文によってばらつきはありますが、幼児の70〜90%が「浮ゆび」になっていると報告されています。
親世代のプットプリント
現代の若年者のフットプリント
浮きゆびの原因はかかと荷重により足ゆびの機能が低下することです。
かかと荷重で生活するとおなかのインナーマッスルに力が入らず姿勢が悪くなり、運動、特に50m走などが不得意となる研究結果が示されています。
小学生の性別でみた正常とかかと荷重の運動能力の違い
プール学院大学研究紀要 第48号 2008年,31~45
毎年体力調査でこどもたちの運動能力が低下しているのも納得できますよね。
このこどもたちが高齢化した時の日本人の健康寿命はどうなっているのでしょう。
外反母趾にとどまらず膝のO脚変形、背骨の変形で未来の整形外科医はさらに手術、手術の毎日を送っていることでしょう。
これに危機感を覚える現代のバイオメカニクスの専門家が今回の泉大津市「足ゆびプロジェクト」に全国から集まったのです。
50年、100年先の日本人の健康寿命のために私たちのプロジェクトはなんとしても成功させなければなりません。