毎日の診療で足ゆびのレントゲンを診ていて不安になることがあります。
足ゆびの小ゆびの骨は通常、一番先から末節骨、中節骨、基節骨の3つで出来ているのですが、末節骨と中節骨が完全に癒合して一つ関節が減っている人がいるのです。
動物のカラダは長期間使わないと退化していきます。
足ゆびの関節が減っていくのは徐々に足ゆびが退化しているのでしょうか?
ヒトは2足歩行になりフリーになった手を器用に使えるようになった反面、サルと比べて足ゆびは不器用になっていることは誰しもが認めることですよね?
しかし、足ゆびには物を握る機能だけではなく下肢と骨盤を繋ぐ筋肉を収縮させ体幹を安定させる働きがあります。
座りながらみなさんも確認してみて下さい。
❶まず、足の小ゆびを意識しながら床を踏みしめて下さい。太ももの外側(中臀筋)に力が入りませんか?
❷次に足の親ゆびで床を踏みしめて下さい。太ももの内側(恥骨筋)に力が入りますよね。
❸さらに足の中ゆびで床を踏みしめて下さい。太ももの付け根(大腰筋)に力が入ります。
これらの筋肉は大腿骨と骨盤をつなぎとめる重要な筋肉です。
そして、腰をそり気味にして首肩をリラックスし、足ゆび全体で床を踏みしめると自然と背骨が伸び、頭が天井方向に近づいていくのを感じませんか?
足ゆびが骨盤周囲のインナーマッスルから背骨の多裂筋を収縮させ背骨を1本の弾力性のある棒のように変化させたのです。
どうしてこんな機能が足ゆびにあるのでしょうか?
ヒトはもともと4つ足の動物でした。
動物のほとんどが足のウラではなく足ゆびだけで歩行しています。
動物の生死を分ける重要な行動の一つはエサを手に入れることです。チーターは身を低くしてゆっくりガゼルに近づきます。そして一定距離まで来ると一気に飛びかかります。後ろ足の足ゆびはその瞬間、地面を捉え屈曲します。
チーターの体はその体幹と下肢ががっちりと骨盤周囲の筋肉で固定され、背骨から頭もまるでヤリ投げ選手のヤリのようにしなやかにまっすぐガゼルに突き進んでいきます。
ガゼルの方はどうでしょう。
草原で草を食べていたら至近距離からチーターに飛びかかられるわけです。当然、瞬時に後ろ足の足ゆびで地面を蹴り、チーター同様その下肢、体幹、背骨をヤリ投げ選手のヤリのようにしてチーターを振り払って逃げるのです。
この足ゆびを屈曲させる動作は生死に関わる動物の重要な反射と言えます。
足ゆびの機能の一つは全身のインナーマッスルを一気に収縮させ姿勢を安定化させることです。
インナーマッスルの機能が落ち、骨、関節の変形が引き起こされ整形外科疾患になっているとしたら足ゆびの機能がいかに大事かわかりますね。
靴下を履き、さらにその上から靴を履き、私たちの足ゆびの機能はすっかり退化しています。
何万年も前の私たちの祖先からいただいた足ゆびの骨、関節をこれからの私たちの子孫に残していく役目は地球と同じくらい重い仕事です。
足ゆびのこと、私たちと一緒に考えてみませんか?